【報告】第12回適正技術フォーラム/第199回APEXセミナー『「人新世」の危機と、オールターナティブな経済・技術をめぐって』
2021年12月10日(金)に、第12回適正技術フォーラム/第199回APEXセミナー『「人新世」の危機と、オールターナティブな経済・技術をめぐって』がオンライン(Zoom)にて開催されました。当日は、60名(講師・モデレーター・事務局含む)の方々にご参加いただきました。ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
まず、主催者代表挨拶として、特定非営利活動法人APEX代表理事および適正技術フォーラム共同代表の田中直より、今回のフォーラムの趣旨についてお話がありました。ATFJ/APEXでは、かねてより〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉の策定をはじめとする、近代科学技術に代わる技術体系を提案する試みを行なっていますが、それとともに、望ましい経済・社会システムのあり方も打ち出されなければ、持続可能な社会をつくることはできません。一方、斎藤幸平氏は、人類による地球環境の改変で危機に直面する「人新世」において、脱成長とコモンを軸とする、代替的な経済・社会のあり方を提起されています。このフォーラムでは、斎藤氏の提起と、包括的フレームワークを突き合わせて考えていく中で、今後の、あり得べき社会の全体像にせまろうとしたい、とのことでした。
最初の講演としては、大阪市立大学大学院准教授、斎藤幸平氏より、『「人新世」の危機とオールターナティブな経済-脱成長とコモン』という演題でお話をいただきました。気候変動を含む、危機的な現状についてまずご説明をいただき、経済成長と二酸化炭素排出量は現状切り離せない関係にあり、経済成長を目指しながらの脱炭素化は困難であること、そして、現状のSGDsを含む対策では、到底間に合わないということを、データに基づいて示されました。それを踏まえて、今の社会・経済システムの代替案となり得る、意図的に経済成長を抑制しながら脱炭素化を目指し、コモンを中心とした平等な世界を目指す、「脱成長コミュニズム」についてご説明いただきました。 | 次の講演として、適正技術フォーラム/特定非営利活動法人APEX代表理事田中直より、『持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク -近代科学技術に代わる技術体系をめぐって』というテーマで、発表がありました。まず、包括的フレームワークとその背景・考え方について、次に、適正な技術選択の事例としてAPEXがインドネシアで行なっているコミュニティ排水処理事業についてのお話がありました。最後に、「ユニバーサル・コープ」という、関係者それぞれが提供できるものを出し合い(資金・技術・体力・能力)、その貢献度に応じて収益の配分決定を含む経営権を持つ、という新しい事業体の構想も発表がありました。 |
続くパネルディスカッションでは、國學院大學研究開発推進機構客員教授古沢広祐氏にモデレーターをお願いし、2名のパネリスト(講師)とともに、議論を深めました。講演の中で発表があった、「ユニバーサル・コープ」についての質疑・応答が多く、活発な議論となりました。 |
今後も、オンライン上でのイベント開催が多くなるかと存じますが、ぜひ積極的にご参加いただけますとさいわいです。